💗 「算数きらい!」「どうせできない」——その言葉の裏に、「できなくて悔しかった経験」が隠れていることがあります。このページでは、算数を嫌がるようになる流れを整理したうえで、家庭でできる手だてを「問題のレベル」「教え方」「声かけ」「親の関わり方」の順にまとめました。親が算数を得意でなくてもできることばかりです。
※ ここで紹介する方法は、にじゅうまる。で家庭学習を行う際の一例です。算数への苦手意識の原因や、適した学習方法には個人差があります。お子さんの様子に合わせて、無理のない範囲で調整してください。
算数嫌いが生まれる「悪循環」のしくみ
算数を嫌がるようになる流れは、次のような循環として整理すると考えやすくなります。
入り口はたいてい小さなつまずきです。くり上がりで手間取った、九九の暗唱で恥ずかしい思いをした、テストの点を叱られた——そこから「算数=嫌な気持ちになる時間」という結びつきができ、避けるようになり、練習量が減って、ますますできなくなる。
感情(嫌い)を説得で変えるのは難しいものです。一方で、「できた」という事実は家庭で作れます。このページの手だては、すべてこの「できない」の部分を「できた」に置きかえるためのものです。
まず安心してください:親の役割は先生ではない
子どもの学習を支える役割を分けてみると、「教える」以外にも大切な仕事があることがわかります。
| 役割 | 担当 |
|---|---|
| 解説する(教える) | 学校の先生・教科書・解説つきの教材 |
| 練習の場を用意する | ドリル・宿題 |
| 丸つけ・採点 | 自動採点の教材・解答冊子 |
| 時間を確保する・環境を整える・応援する | 家庭(ここは親にしかできない) |
「教える」には代わりがいます。けれど、毎日の学習時間を確保し、安心して取り組める空気を作り、頑張りに気づいて言葉にするのは家庭の役割です。算数が苦手な親ほど「教えられない」ことを気にしがちですが、担当が違うだけです。
手だて①:「無理なく解けるレベル」まで下げる
算数を嫌がる子への最初の一手は、教えることではなくレベルを下げることです。算数は積み上げの教科なので、今日の宿題がわからない原因が、数週間前・1学年前の単元にあることがあります。
| 今つまずいている単元 | さかのぼって確かめたい単元 |
|---|---|
| わり算 | 九九(特に6〜8の段) |
| 筆算全般 | 1桁のたし算・ひき算を迷わず答えられるか |
| 約分・通分 | 倍数・約数 → 九九 |
| 割合 | 小数のかけ算・わり算 →「倍」の意味 |
| 文章題 | テープ図・線分図をかく練習 |
- にじゅうまる。では、今の学年で半分ほどしか正解できない場合に1学年下、それでも詰まるようなら2学年下、という下げ方を目安にしています
- 目標は「ほとんど正解できること」。落ち着いて解けるレベルまで下げてかまいません
- 「簡単すぎない?」は言わないでおきます。簡単に解けている姿は、立て直しが進んでいるサインです
プライドが気になる子には「復習は実力の貯金」「スポーツ選手も毎日基礎練習をするよね」と伝えます。デジタルドリルなら学年の切り替えがすぐにでき、誰にも見られずに下の学年を練習できるのも利点です。全問正解が数日続いたら半歩だけ上げる、という進め方を一つの目安にしています。
手だて②:「具体物 → 図 → 式」と段階を下げて見せる
算数の理解には順序があります。言葉と式の説明で伝わらないときは、説明を繰り返すより段階を下げるほうが通じることがあります。
- 具体物:おはじき・ブロック・お金・お菓子を実際に動かす
- 図:○を並べた絵、テープ図、線分図
- 式:数字と記号
「何度言ってもわからない」ときは、言い方ではなく段階が合っていない場合があります。具体物でできたら図で、図でできたら式で——と1段ずつ上がっていけば、無理なく式に進めます。
手だて③:ヒントは3段階で小出しにする
すぐに解き方を言ってしまうと、子どもは「待てば教えてもらえる」と覚えてしまいます。ヒントはレベル分けして、小さい方から出してみてください。
| レベル | ヒントの例 |
|---|---|
| Lv1(方向づけ) | 「問題文をもう1回声に出して読んでみて」 |
| Lv2(道具の提案) | 「図にするとどうなりそう?」「前にやった似た問題なかった?」 |
| Lv3(最初の一歩) | 「まず、わかっている数に○をつけてみよう」 |
Lv1で解けたら「自分で解けた」という成功体験になります。教えることのゴールは、教えなくても解ける状態です。もどかしくても、答えまでの距離を子どもに歩かせてあげてください。
手だて④:家庭の「言葉の環境」を変える
算数への気持ちは、家庭で交わされる言葉からも影響を受けます。比較と否定をやめて、「現在地の確認」と「部分的に認める」言葉に置きかえるのがポイントです。
❌「なんでこれがわからないの?」→ ⭕「どこまではわかってる?」
❌「さっき教えたでしょ」→ ⭕「もう1回、違うやり方で見てみよう」
❌「そうじゃない!」→ ⭕「お、おしい。ここまでは合ってるよ」
❌「○○ちゃんはもう九九できるって」→ ⭕「昨日の自分より進んでるね」
❌「お母さんも算数ダメだったから、仕方ないね」→ ⭕「お母さんも苦手だったけど、毎日ちょっとずつやったらできるようになったよ」
共通するのは、能力ではなく変化を語ること。「できる/できない」の二択から、「昨日より今日」の見方へ、言葉で連れ出してあげてください。
手だて⑤:ゲームの力を借りる
「勉強」と言われた瞬間に嫌がる子も、ゲームなら計算に向かえることがあります。
- タイムアタック:九九チャレンジで「昨日の自分に勝てるか」。相手が自分なら、負けても傷つきにくい
- ランキング挑戦:名前が載ることを、続けるきっかけとして使える
- 親子対決:「お父さんと計算勝負」。ときどき大人が負けるのがコツ
- すごろく・トランプ・買い物ゲーム:紙のドリルが嫌いでも、遊びの中の数なら楽しめることがある
ゲーム化のねらいは「失敗のダメージを下げ、成功の喜びを上げる」ことです。間違えても「もう1回!」で済む空気が、挑戦の回数を増やします。遊びの例は算数が楽しくなるゲーム・遊びにまとめています。
手だて⑥:「嫌い」の下にある具体的なつまずきを探す
「算数ぜんぶ嫌い」に見えても、話を聞くと特定の単元のつまずきが見つかることがあります。子どもの「わからない」には情報がないので、次のような質問で場所を絞り込みます。
- 「問題文で、意味のわからない言葉はある?」(読みのつまずき)
- 「この問題、絵にかける?」(イメージのつまずき)
- 「式はわかる? 計算がむずかしい?」(式を作る段階と計算の切り分け)
- 「どこまでは自信ある?」(現在地の確認)
| 「嫌い」の正体(例) | 対策ページ |
|---|---|
| 九九が遅くて自信がない | 九九の覚え方 |
| 文章題で固まってしまう | 文章題の解き方 |
| 割合から急にわからなくなった | 割合の教え方 |
| ミスを叱られるのが怖い | 計算ミスを減らす方法 |
学年ごとのサインはお悩み別ガイドでも整理しています。
教える時間は「1回15分まで」と決めておく
家庭で教える時間は、短いほうがうまくいきやすくなります。長くなるほど、教える側も子どもも疲れて、言葉がきつくなりがちだからです。にじゅうまる。では1回15分を一つの区切りにしています。
- タイマーで15分を計り、時間が来たら「続きは明日」と気持ちよく切り上げる
- 15分で終わらない量は、1日分として多すぎるサインかもしれません。量を減らしてみる
- 「解決しないまま終わる」ことを恐れない——翌日にあっさり解けることもあります
親が算数が苦手でもできること
教える役を教材に任せたぶん、家庭では次のようなサポートに力を回せます。どれも算数の知識は必要ありません。
- 時間と場所を決める:「夕食前の10分はドリルの時間」と決め、その時間はテレビを消す。仕組みづくりは家庭学習を続ける仕組みで詳しく書いています
- 隣に座る:教えなくていいので、隣で家計簿や読書を。「一緒に頑張る時間」にする
- 頑張りに気づいて言葉にする:「毎日続いてるね」「字がていねいになった」——結果ではなく変化を言葉に
- 記録係になる:カレンダーに○をつける、九九のタイムをメモする。伸びが目に見えると続けやすくなります
- 学校の先生に聞く:個人面談で「家庭では何をサポートすればいいですか」と聞くと、学校での様子もわかります
質問されてわからないときは、ごまかす必要はありません。
子:「ねえ、台形の面積ってどうやるの?」
親:「いい質問。お母さんも忘れちゃった。一緒に教科書を見てみよう」
→ 教科書の例題を2人で読む →「上と下を足して、高さをかけて、半分にするんだね」
このやりとりで伝わるのは公式だけではありません。「わからないことは調べれば解決できる」という学び方も一緒に伝わります。逆に「お母さんに教えて」と子どもを先生役にするのも、理解を整理するよい機会になります。
| タイミング | 5分以内でできること |
|---|---|
| 朝 | 「今日の時間割に算数ある?」の一言 |
| 夕方 | 「時間だよ」の声かけ+終わったら結果を一緒に見る |
| 夜 | カレンダーに○をつける・タイムをメモする |
| 週末 | 1週間の記録を見ながら「6日もできたね」と振り返る |
場面別の声かけ例
| 場面 | 声かけ |
|---|---|
| 始める前 | 「今日は1問だけやってみよう」(ハードルを下げる) |
| 解いている途中 | 「いい姿勢だね」「字がていねいだね」(内容以外も認める) |
| 正解したとき | 「どうやって解いたの?」(説明させる=よい復習) |
| 間違えたとき | 「ここまでは合ってる。おしい!」(どこからずれたか一緒に探す) |
| 終わったあと | 「昨日より1分速かったね」(過去の本人と比べる) |
低学年と高学年で違う対応
- 低学年(1〜3年):嫌いがまだ浅い時期。ゲームや実物遊び(おはじき・すごろく・買い物)で「算数=楽しい時間」の記憶を上書きしやすい。親子の関わりが大きな力になります
- 高学年(4〜6年):「できない自分」のイメージが固まりかけている時期。子ども扱いのゲームより、タイムの記録など数字で伸びが見える仕組みと、プライドを守るさかのぼり(誰にも見られず下の学年を練習できるデジタルドリル)が合うことがあります
高学年は「今さら4年生の内容なんて」と本人が気にしていることがよくあります。「中学に入る前に穴を埋めるのは、受験生もやる作戦だよ」と、さかのぼりを大人の戦略として伝えると受け入れやすくなります。
回復のロードマップ:嫌い→普通→まあ好き
「算数を好きにさせる」は遠すぎる目標です。まず目指すのは「嫌いじゃない」。にじゅうまる。では次の3段階で進める方法をおすすめしています。かっこ内の期間は一つの目安で、必要な時間には個人差があります。
- 第1段階:簡単なレベルで毎日1〜3問。「算数の時間に嫌な気持ちにならない」が目標(2週間ほどを目安に)
- 第2段階:タイム記録やシールで「伸びた」を見える化。「ちょっとできるかも」が目標(1か月ほどを目安に)
- 第3段階:学年レベルに少しずつ近づける。テストで「あ、解ける」を経験できると手ごたえにつながります
途中で嫌がる日があっても、レベルと量を下げて続けてみてください。気持ちの回復は行きつ戻りつ進むことが多いので、しばらく前と比べて「嫌がる回数が減ったか」で様子を見るのも一つの方法です。
やらないようにしたいこと
- 「うちは算数できない家系だから」:能力の刷り込みは、努力する理由を奪います。苦手話は「やったらできるようになった」の文脈で
- きょうだいとの比較:比べる相手は「昨日のその子」だけに。記録もきょうだいで別々のカレンダーにすると、比較が生まれにくくなります
- 無理に我流を教える:学校のやり方と違う解き方は混乱のもと。学習中の単元は、教科書やノートで学校のやり方を確かめてから
- 点数だけで判断する:内容がわからなくても「続けた日数」「直しをしたか」は見えます。そこを評価の軸に
算数を嫌がる子にとって、「さあ勉強しよう」という合図そのものが負担になることがあります。そういうときは、机に向かう前に、ふだんの会話の中で数を使う方法があります。
買い物のお釣り、出かけるまでの残り時間、おやつの分け方——どれも答えが生活に直結しているので、「正解しなさい」という空気になりにくいのが利点です。
幼稚園のころから、会話の中で計算を出すようにしていました。買い物中は「1000円出すとお釣りはいくら?」、出かける前は「何時に出発するから、残り何分?」と聞いていました。
家庭サポートの振り返りチェック表
| チェック項目 | できる | 少し迷う | まだ難しい |
|---|---|---|---|
| 説明の前に、どこでつまずいたか聞いている | |||
| 1学年下まで戻ることに抵抗がない | |||
| 答えではなくヒントを段階的に出している | |||
| 具体物→図→式の順で扱っている | |||
| 他の子やきょうだいと比べていない | |||
| 「どうやって解いたの?」と聞いている | |||
| 1回の教える時間を区切っている |
「まだ難しい」が付いた行が、いま取り組む場所です。上から順にひとつずつで十分です。
学年を自由に行き来できるので、「1学年下をやってみる」のハードルが下がります。採点は自動なので、丸つけで言い合いになることもありません。
学年を選んでドリルをやってみる →確認日: 2026年8月22日。さかのぼり表の学年配当は上記資料で確認しています。学習指導要領の「指導計画の作成と内容の取扱い」では、具体物を用いた活動や、図・式などを用いて考えることが、学年を通して大切にされています。家庭では、式で止まったときに「具体物→図→式」の順に戻す、という形でこの考え方を使えます。声かけ例と進め方は、にじゅうまる。運営者による整理です。
よくある質問
Q1. 算数を嫌がる子に、まず何をすればいい?
教える前に、無理なく解けるレベルまで下げてみてください。1学年下でもかまいません。「できた」を先に作ります。
Q2. 何度教えても伝わらず、ケンカになります。
言い方ではなく段階を変えてみてください。式→図→具体物と戻し、ヒントは小さい方から。1回15分で区切るのも一つの方法です。
Q3. 親が算数が苦手で、教えられません。
問題ありません。解説は教材と先生に任せ、時間の確保・隣に座る・頑張りを言葉にする・記録をつける、を担当に。わからない質問には「一緒に調べよう」で十分です。
Q4. 「どうせできない」が口癖です。
説得より、「できた」という事実を淡々と積み上げてみてください。「昨日より進んだね」と変化を言葉にします。
Q5. 学校と家庭で解き方が違って混乱しています。
学習中の単元は学校のやり方に合わせるのがおすすめです。別の解き方は「そういうやり方もあるんだね」と紹介にとどめ、単元のテストが終わってから広げると混乱しにくくなります。
Q6. 塾に入れれば解決しますか?
塾は「解説」と「練習の場」を担ってくれますが、「毎日の習慣」と「家庭の空気」は家庭で作るものです。塾に通っていても、このページの家庭サポートはそのまま役に立ちます。
Q7. 一度落ち着いても、また嫌がるようになることはありますか?
あります。新しい難しい単元(特に5年生の割合)でつまずくと、嫌がる気持ちが戻ることがあります。そのときは慌てず、同じ手順(レベルを下げて「できた」から)をもう一度回してみてください。
まとめ
算数を嫌がる気持ちは、手順を踏んでいくと和らいでいくことがあります。焦って学年レベルの問題を押しつけると、逆効果になることもあります。レベルを下げ、段階を下げ、言葉を変えて、「できた」を積む——遠回りに見えますが、家庭で試しやすい進め方です。
- 嫌いの正体は「できない→嫌い→やらない」の循環。入口は「できた」を作ること
- 伝わらないときは「具体物→図→式」と段階を下げ、ヒントは3段階で小出しに
- 能力ではなく変化を語る言葉に。比べる相手は昨日のその子
- 親の役割は先生ではなく、時間・環境・応援・記録の担当
- 目標は「好き」ではなく「嫌いじゃない」。行きつ戻りつでも前進
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