👨👩👧 「教えているのに伝わらない」「最後はケンカになる」——家庭学習の一番の悩みは、実は算数そのものではなく教え方です。このページでは、苦手な子に効く教え方の原則と、今日から使える声かけを紹介します。
原則①:教える前に「どこまで戻るか」を見つける
算数は積み上げ教科です。今日の宿題がわからない原因は、今日の内容ではなく数週間前・数学年前の穴にあることがほとんど。だから最初にやるべきは説明ではなく診断です。
| 今つまずいている単元 | さかのぼり先 |
|---|---|
| わり算 | 九九(特に6〜8の段) |
| 筆算全般 | 1桁のたし算・ひき算の即答 |
| 約分・通分 | 倍数・約数 → 九九 |
| 割合 | 小数のかけ算・わり算 →「倍」の意味 |
| 文章題 | 図(テープ図・線分図)をかく練習 |
「1学年下のドリルをやらせるなんてかわいそう」と思う必要はありません。スラスラ解ける場所から始めるのは、治療であり貯金です。「復習は実力の貯金だよ」と前向きな言葉で誘いましょう。
原則②:「具体物 → 図 → 式」の3段階で教える
算数の理解には順序があります。言葉と式の説明で伝わらないときは、段階を下げましょう。
- 具体物:おはじき・ブロック・お金・お菓子で実際に動かす
- 図(半具体物):○を並べた絵、テープ図、線分図
- 式:数字と記号
たとえば「12÷3」がわからない子に式の説明を繰り返すより、あめ12こを3人に配らせる方が一度で伝わります。「何度言ってもわからない」は、言い方の問題ではなく段階の問題。1段下がれば通じます。逆に、具体物でできたら図で、図でできたら式で——と1段ずつ上がっていけば、確実に抽象化できます。
原則③:ヒントは3段階で小出しにする
すぐ答えや解き方を言ってしまうと、子どもは「待てば教えてもらえる」と学習します。ヒントはレベル分けして、小さい方から出しましょう。
| レベル | ヒントの例 |
|---|---|
| Lv1(方向づけ) | 「問題文をもう1回声に出して読んでみて」 |
| Lv2(道具の提案) | 「図にするとどうなりそう?」「前にやった似た問題なかった?」 |
| Lv3(最初の一歩) | 「まず、わかっている数に○をつけてみよう」 |
Lv1で解けたら「自分で解けた」という最高の成功体験になります。教えることのゴールは、教えなくても解ける状態。もどかしくても、答えまでの距離を子どもに歩かせてあげてください。
言ってはいけないNGワードと言いかえ
❌「なんでこれがわからないの?」→ ⭕「どこまではわかってる?」
❌「さっき教えたでしょ」→ ⭕「もう1回、違うやり方で見てみよう」
❌「そうじゃない!」→ ⭕「お、おしい。ここまでは合ってるよ」
❌「お兄ちゃんはできたのに」→ ⭕「昨日の自分より進んでるね」
❌「早くしなさい」→ ⭕「ゆっくりでいいから、確実にいこう」
共通するのは、比較と否定をやめて、現在地の確認と部分肯定に変えること。算数の苦手意識は「算数がわからない」より「算数の時間が嫌い」から始まります。感情の安全が確保されて初めて、頭は算数に向かえるのです。
「わからない」の解像度を上げる質問
子どもの「わからない」は情報がゼロです。次の質問で、どこでつまずいているかを特定しましょう。
- 「問題文で、意味のわからない言葉はある?」(読みのつまずき)
- 「この問題、絵にかける?」(イメージのつまずき)
- 「式はわかる?計算がむずかしい?」(式化と計算の切り分け)
- 「どこまでは自信ある?」(現在地の確認)
切り分けができれば、対策はお悩み別ガイドの該当ページでピンポイントに打てます。
教える時間は「1回15分まで」と決める
家庭で教える時間は、短いほどうまくいきます。理由は単純で、15分を超えると教える側の忍耐が切れ、子どもの集中も切れるから。ケンカになるのはたいてい20分を過ぎたあたりです。
- タイマーで15分を計り、時間が来たら「続きは明日」と気持ちよく切り上げる
- 15分で終わらない量は、そもそも1日分として多すぎるサイン。量を減らす
- 「解決しないまま終わる」ことを恐れない——寝て起きたら解けた、は子どもの学習ではよく起きます
また、きょうだいがいる家庭では比較を徹底的に避けることも大切です。「お姉ちゃんは九九すぐ覚えたよ」の一言は、本人のやる気を数週間分削ります。比べる相手は常に「昨日のその子」だけです。
うまくいく声かけ 実例集
| 場面 | 声かけ |
|---|---|
| 始める前 | 「今日は1問だけやってみよう」(ハードルを極限まで下げる) |
| 解いている途中 | 「お、いい姿勢」「字がていねいだね」(内容以外も褒める) |
| 正解したとき | 「どうやって解いたの?」(説明させる=最高の復習) |
| 間違えたとき | 「ここまでは合ってる。おしい!」(部分肯定→どこからか一緒に探す) |
| 終わったあと | 「昨日より1分速かったね」(過去の本人と比較) |
特に効果が大きいのは「どうやって解いたの?」です。人に説明すると理解が整理され、定着率が大きく上がります。親は答えを知らないふりをして、子ども先生に教えてもらいましょう。
教えない時間をつくる:環境と習慣
実は、家庭でできる最大の学力サポートは「教えること」ではなく「毎日短時間、机に向かう仕組み」です。
- 時間と場所の固定:「夕食前にリビングで10分」——迷いをなくす
- 自動採点に任せる:丸つけバトルをなくし、親は結果を一緒に見て褒めるだけ
- 記録を見える化:タイム・連続日数・ランキング。伸びが見えるとやる気は続く
- 親は隣で自分の作業:「監視」ではなく「一緒に頑張る時間」に
習慣づくりの詳細は家庭学習を続けるコツで解説しています。
よくある質問
Q1. 何から教えればいい?
教える前に診断を。1学期前・1学年前に戻り、スラスラ解ける地点から再スタートしましょう。
Q2. すぐケンカになります。
「教える係」をやめて「質問する係・褒める係」へ。丸つけは自動採点に任せましょう。
Q3. 何度教えても同じ間違いをします。
説明の回数ではなく段階を変えましょう。具体物→図→式の順にやり直すと通じます。
Q4. 親自身が算数が苦手です。
問題ありません。解説はドリルに任せ、親は環境・習慣・応援の担当に。「一緒に考えよう」は最高の声かけです。
Q5. 学校と家庭で教え方(解き方)が違って混乱しています。
学習中の単元は学校のやり方に合わせるのが原則です。さくらんぼ計算や筆算の書き方は教科書・ノートで確認してから教えましょう。別の解き方は「そういうやり方もあるんだね」と紹介にとどめ、テスト期間が過ぎてから広げると混乱しません。
まとめ
教え方の技術は一朝一夕には身につきませんが、「診断→段階を下げる→質問で導く→部分肯定」の流れさえ覚えておけば、今日から家庭学習の空気は変わります。完璧な先生になる必要はありません。子どもの一番の応援団でいることが、何よりのサポートです。
- 教える前に診断。さかのぼって「スラスラ解ける地点」から
- 伝わらないときは「具体物→図→式」と段階を下げる
- ヒントは3段階で小出しに。ゴールは「教えなくても解ける」
- 比較と否定をやめ、部分肯定に。感情の安全が学びの土台
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